その他ご質問

イヌの乳腺腫瘍の良性 / 悪性の割合は。

イヌの乳腺腫瘍の良・悪の比率は一般的には50:50とも言われていますが、実際は良性腫瘍の割合が高く、当社の検査データでは良性が6~7割、悪性が3割程度の結果となっています。犬種による差もかなり大きく、大型犬では悪性である割合が高い傾向にあります。各犬種による差につきましては、弊社発行の「いぬの病理なび――犬種別病理組織診断データ集」をご参照下さい。

ネコのワクチン接種後肉腫を疑っているが、確定診断は可能か。

組織学的検索のみで腫瘍発生の原因がワクチン接種であると確定づけるのは難しいものの、臨床的な情報、および腫瘍の組織学的な特徴を併せ、ワクチン関連性肉腫とされている典型病変と類似しているか否かを総合的に評価することで、確定的な診断を下せる場合はあります。

ネコの肥満細胞腫のグレード分類は可能か。

ネコの肥満細胞腫でも高分化型、組織球型、多形型などの組織分類が存在しますが、それらの組織型と臨床的な悪性度の関連性は明らかにされておらず、イヌと同じ様なグレード分類は確立されていません。しかし、核分裂指数が高いと予後が良くないことが知られています。

 悪性リンパ腫のT細胞性とB細胞性を分類する意義はなにか。

主に予後の予測と抗がん剤の選択に有用です。臨床的に治療方針を策定するためにはまず低グレード/高グレードの鑑別が重要ですが、さらにT/B鑑別を行うことで4つ(下記)に大別した場合のどのタイプに相当するか、判断することが可能となります。

  • B細胞性・高グレード
  • T細胞性・高グレード
  • B細胞性・低グレード
  • T細胞性・低グレード

一般的にT細胞性・高グレードのタイプが最も悪性度が高く、予後が悪いとされています。

なお、悪性リンパ腫のT/B鑑別検査につきましては、以下のリンク先をご覧ください。

腺癌の転移の診断だが、由来となる臓器は何か。

腺癌は様々な臓器に原発する上皮性腫瘍のため、分化の方向性を見る組織像のみで由来臓器を特定することが難しい場合が少なくありません。病歴や粘液産生性などから総合的に判断して推定することが可能な場合もありますが、基本的には他の部位、臓器などに病巣が存在しないか、画像検査等で精査して頂く必要があります。

無菌性結節性脂肪織炎の確定診断は可能か。

病理組織学的に脂肪織炎であると診断することは可能ですが、組織切片上に感染性病原体が観察されなくても、最終的に無菌性脂肪織炎であるか否かを証明するには培養検査等で感染性を除外し、他の要因(異物や栄養性など)を否定することが必要になります。病理検査も含め、総合的な判断が求められる病態です。

足にできた腫瘤を検査したら、犬血管周皮腫、腫瘍境界は不明瞭との結果であった。断脚すべきか。

犬血管周皮腫を含めた軟部組織肉腫は、偽被膜(腫瘍細胞を含む被膜様構造)で覆われることが多いため、偽被膜と周囲組織を含めた広範囲での切除が必要となり、肉眼的なマージンとして、水平方向3センチ、垂直方向3センチあるいは筋膜一枚が必要と言われています。根治的な切除を望む場合、周囲間質組織の追加切除を行ってもこれらのマージン確保が困難であれば、筋肉、骨をも含めた完全切除を考慮に入れる必要があります。

腫瘍疾患を強く疑って検体を送ったが、炎症性病変との結果だった。腫瘍の可能性はないか。

炎症を強く伴う腫瘍が形成されている場合、細胞診やバイオプシーなどの一部組織での検査では、目的とする細胞や組織が得られず、周囲の炎症部位のみが得られることも少なくありません。臨床的に腫瘍が強く疑われる場合には、異なる部位や複数箇所、あるいはより広い範囲での組織を採取の上、再検査を行うことが推奨されます。

イヌの陰部から液体が多量に出ている。調べてみると子宮内に液体が大量に貯留して、腫大している。臨床的には子宮水腫と思われるが、病理検査で診断可能か。

子宮内に貯留した液体成分は切り出し時に流出してしまうため、顕微鏡で観察することはできませんが、組織像として子宮内腔が拡張し、子宮壁が非薄化している場合には、肉眼所見、臨床所見と併せて子宮水腫に相当する病態と診断します。蓄膿症の場合は膿が固定されて標本化できるため、組織で鏡検できる場合が大半です。

乳腺を全摘出したが、鼠径部リンパ節も診てほしい。リンパ節は別臓器となり2種の検査になるか。

乳腺と付属の腋窩部・鼠径部リンパ節は同時に切除・検査された場合、弊社検査では1種での検査が可能です。乳腺組織は部分摘出でも全摘出でも同時の検査であれば、1種でお受けすることが可能です。なお、乳腺付近の皮膚病変は別臓器カウントとなります。

 化学療法後の肥満細胞腫のグレード分類はできるか。

化学療法により腫瘍サイズが縮小して浸潤程度が変化し、分裂活性のある細胞割合も変わってしまうため、正確なグレード分類は難しい場合があります。化学療法後に目安としてグレード分類を行うことはできますが、どれほど予後と相関しているのかはわかっていません。

 病理組織検査で病原体の同定はできるか。

特徴的な組織像を呈す場合には同定できるものもありますが、基本的には困難です。組織上に細菌が明らかに存在する場合、形態的に球菌か、桿菌かという判断やグラム染色での染色性(陽性菌か陰性菌か)を評価することはできますが、菌種の同定まではできません。チールネルゼン染色(抗酸菌染色)では抗酸菌を赤色に染めることが可能なため、存在する細菌が抗酸菌か否か、あるいは抗酸菌が組織上に存在するか否か、を判断することはできますが、こちらも正確な菌種の同定まではできかねます。真菌は細菌より大型になりますので、形態は観察しやすくなり、アスペルギルス属の頂嚢やクリプトコッカスの莢膜など特徴的な構造が観察できれば、ある程度病原体を絞り込むことは可能です。寄生虫は毛包虫など感染部位が限られる場合には病理組織での観察が有用ですが、多くの原虫類、線虫類等の同定には不向きです。