遺伝子検査について
イヌの皮膚肥満細胞腫でPatnaikⅡ型、Kiupel低グレード、マージンクリア、脈管侵襲なしであった。c-kit遺伝子変異検査はやった方が良いか。
分子標的薬の基本的な適応症例は組織学的な悪性度が高いタイプの肥満細胞腫ですが、低グレード相当の肥満細胞腫であっても悪性腫瘍であることは変わりなく、転移・再発リスクを否定することはできませんので、遺伝子検査により薬効予測を立てておく意義は充分にあると考えられます。
c-kit遺伝子変異検査で結果解析が不可能なことがあると聞いたが、どれくらいの割合か。
長期間のホルマリン固定は、DNAの断片化を引き起こすことが知られています。
当社での組織検査からの遺伝子検査では、ホルマリン固定期間を最小限にとどめて作製したパラフィン包埋組織を使用して検査を行っていますので、DNA断片化による解析不能の頻度はごく僅かです(0.06%以下:過去5年2022年時点)。
c-kit遺伝子変異検査において、陽性箇所の違いは治療薬選択や予後に関係するのか。
肥満細胞腫の場合、イヌではエクソン11陽性例で高い確率で著効を示し、ネコではエクソン8陽性例で高い確率で著効を示す報告があります。イヌではエクソン8、9、ネコではエクソン9の陽性例の大規模な調査は行われていませんが、著効報告があり、いずれかの箇所が陽性を示す場合には各分子標的薬の効果は期待できると考えられます。
肥満細胞腫c-kit陰性例。薬は効かないと判断して良いのか。
著効が見込めるとは言えない結果となりますが、陰性例でも分子標的薬への反応性を示す症例は少なからず存在するようで、そのような症例の場合は検出できない遺伝子部位に変異がある、もしくは未知の作用機序によるものと考えられています。
細胞診で悪性リンパ腫と診断された。T細胞性かB細胞性か鑑別するにはどうしたら良いか。
十分な細胞量が得られている場合には、塗抹標本を用いた遺伝子検査による鑑別が可能です。また、組織を採取あるいは摘出される場合には、病理組織標本の免疫染色による鑑別も可能です。
塗抹標本での免疫染色による鑑別をご希望の場合は、当社販売の「細胞剥離防止コートガラス」に塗抹いただく必要があります(こちら(悪性リンパ腫の免疫染色)も合わせてご覧ください)。
追加の検査、あるいは詳細な情報をご希望の場合にはご連絡下さい。
塗抹標本からの遺伝子検査は可能か。
十分量の細胞がえられている場合には可能です。ただ、腫瘍関連の遺伝子検査では、塗抹に占める腫瘍細胞の含有率(非腫瘍有核細胞の混在の程度)も考慮する必要があります。遺伝子検査が可能かの判断は、病理診断医が行いますのでお問い合わせください。
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