採取法について
尿沈渣をセルブロックで検査したい。どうすればよいか。
尿を遠心後、上清を捨て、沈渣物の体積に対して10倍量程度のホルマリン液(組織検査と同じ10~20%濃度のもの)を注入して下さい。容器は蓋ができる遠心管やスピッツ管などが推奨されます。複数本に分かれても構いませんので、そのまま通常の組織検査と同様に弊社へご送付下さい。なお、セルブロック作製には、少なくとも管の底に2~3mmほどの沈渣が必要となります。沈渣量を確認いただき、この量に満たない場合はホルマリン固定をせずに、沈渣より塗抹標本を作製して細胞診検査としてご依頼下さい。
腫瘤を穿刺したところ液体が採取された。この液体をそのまま検体として送付してよいか。
液体中に含まれる細胞は時間とともに変性・壊死してしまうため、検体到着時には検査不可能な状態となっている可能性があります。そのため、液状検体をそのままお受けすることはできません。スライドガラスに塗抹して乾燥させた状態で、細胞診検査としてご提出下さい。なお、含まれる細胞量が少ない場合は、遠心後の沈渣から塗抹を作成して頂いた方が有意な結果が得られやすくなります。また、セルブロック法での検査も可能です。
セルブロック検査の検体送付法については、「尿沈渣をセルブロックで検査したい。どうすればよいか。」をご覧下さい。
天疱瘡の診断は可能か。採取法は。
棘融解細胞の出現を伴った膿疱や表皮の裂隙など特徴的な病理組織学的所見が得られれば、HE染色での診断が可能です。場合によっては抗IgG抗体を用いた免疫染色を行い、表皮細胞間に免疫グロブリン沈着があるか確認する必要があることもあります。採取方法は6㎜程度のパンチ(トレパン)で複数箇所から採材し、ホルマリン固定して下さい。採取部位によっては非特異的な炎症像のみが観察され、診断に至らないことがありますので、なるべく潰瘍の中心部や壊死部は避けて下さい。また、ステロイド治療を行うと特徴的な所見が消失し、診断できないこともあります。少なくとも1週間程度の休薬が必要です。
断脚検体や脾摘の検体が送付用容器に入らない。病変部分のみの提出で良いか。
マージンや浸潤の有無などを含めて評価しますので、可能な限り摘出した全ての組織をご提出頂くことを推奨します。大きな厚手のビニール袋などにホルマリン液が漏れないように入れて頂くか、臓器を分割される場合にはその全体像がわかるように依頼書にご記入下さい。やむを得ない事情で一部のトリミング検体をご提出される場合には、一部組織である旨を依頼書にご記載の上、ご送付下さい。
割の必要性について。
割により切除縁の状態や全体像が分からなくなってしまう場合がありますので、小型の検体の場合は不要です。大型の検体でも十分量のホルマリン液に速やかに浸漬して頂ければ基本的には割は不要ですが、血液が豊富な脾臓や腫瘍化して巨大化した精巣などでは割を入れた方が固定状況が良くなります。割面を入れられる際にはなるべく切除縁(マージン評価部位)を避け、入割した旨を依頼書欄にご記載頂けると非常に助かります。
リンパ腫を疑っている。リンパ節の細胞採取法、注意点など。
悪性リンパ腫の細胞は脆弱なことが多く、吸引時の陰圧によって裸核化したり潰れてしまったりすることがあります。塗抹時の圧も強くしすぎない事が良好な標本を得るためには必要です。また、細胞診のための塗抹標本作製全般に言えることですが、塗抹後は速やかにドライヤーなどの冷風で30分以上風乾固定させることが推奨されます。完全に乾燥させ、すぐに送付いただく場合には、メタノール固定は不要です。
悪性リンパ腫を疑う検体で、細胞診での免疫染色(T/B鑑別)を追加実施する可能性がある場合には、こちら(悪性リンパ腫の免疫染色)も合わせてご覧ください。
骨髄の検査をしたいが、どのような検体を採取・提出すべきか。
塗抹標本での細胞診検査が第一選択です。また、細胞密度や低形成/過形成の把握には組織でのコア生検も有用です。両方提出頂くと、さらに診断精度が高まります。また、白血病が疑われる場合には末梢血の塗抹標本も同時にお送り頂けると総合的な判断が可能となります。